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リラックス

 秋分の日の阿蘇山は、朝焼けがとても美しく、日の出と同時に虹も架かり、朝日に照らされた阿蘇山は黄金に輝き、私と同じ場所にいた人々は至福の時を味わいました。この至福は大人から子供まで、霊性修行が進んでいる人からそういったことには全く興味を持っていない人まで、誰もが同じように体験することができるものです。



 我々は一般的にはマインド=心が自分自身だと思っています。またマインドは落ち着きがないものですので、あれを考えたりこれを考えたりと、あっちこっちへと移動します。しかし、瞑想や禅、マインドに常に注意を払うといった霊性修行を続けていくと、自分の思考=マインドの動きを客観的に見れるようになってきます。「今私はこんなこと考えている」とか「今私はイライラしている」とかどこか冷静な自分がいます。落ち着きのないマインドの動きを、ある不動の中心点へ戻すことが容易になってきます。そしてただ、全てに気づいているという認識者の立場になります。

 よく使われる喩えですが、通常は映画館で映画を見ているときは、スクリーンに映し出された映画だけを見て、そのストーリーに巻き込まれていきます。しかし気づいている立場と言うのは、映画館の部屋、スクリーンに映し出された映画、そしてそれを観客として見ている自分を見ている立場です。映画のストーリーに巻き込まれることなく、ただ映画が進んでいるのを見ます。また映画を見て一喜一憂している自分を見ています。この立場ですと、映画の内容が何であれ、影響を受けることはありませんし、また映画の内容を変えようとも思いません。


 しかしこういうことを言うと、実際にはただ頭が混乱するだけの方もいらっしゃると思いますので、今度は逆の立場からマインドが動くまでを大雑把に見てみますと、認識者のマインドの状態は、まるで無風状態でさざ波が全く起っていない湖面のように静かな状態です。そこに石が投げ込まれたり、風が吹いたりして何かしらの刺激が起こり水面に変化が現れるようにマインドが動き始めます。

 実際にはマインドが肉体を生み出しますので順序は逆ですが、肉体的な感覚で言うならば、完全に脳がリラックスした状態から微妙な緊張が生まれ、そしてマインドが動き始めます。ですから簡単に言えば、リラックスすることを覚えることが大切になってきます。その方法は何でも良いです。庭仕事でも良いですし、料理でも、お掃除でも。

 私はスピリチュアルな世界に興味を持つ前、ピアノを弾くのが趣味でしたが、バッハの平均律第一巻のロ短調プレリュードを弾くと、途中から自分がピアノを弾いてることも忘れて何度も何度も繰り返し弾いているときがありました。トランス状態ですね。その時はとても満たされた思いがありましたので、そればっかり弾いている時期がありました。
 しかしここで大切なことはそれだけでは霊性修行にならないと言うことです。つまり、その心地良さが終わったら、普通に欲望のある状態に戻ってしまいます。睡眠もそうですが、眠りのときはマインドは静まり幸せですが、何十年間、毎日睡眠をとっても誰も我々は悟りませんね。ですので、まず、この世の中で至高の教えと言われている、『悟りの教えをまず聞く』ということが必要です。それからどれほど真剣に目指すかになります。


 美しい風景を見たり、夕焼けを見たり、赤ちゃんを見ているときはただ見ているだけで幸せを感じた経験をしていると思います。このとき味わう静かな幸福、至福が我々の本質ですね。ですからそのような状況のときは、その至福が自分自身の愛だと知ってただ浸る、その至福にできるだけ身を委ねるといったことはとても良いことです。素晴らしい霊性修行になります。老子が美しい風景を数人で見ていたとき、「とても美しいですね〜」と声を掛けてきた人の友人を注意したと言われていますが、それはマインドが停止し、至福に浸っているときに、マインドの世界に引き戻したからです。ですので赤ちゃんがいる人や美しい自然の中、夕焼けが綺麗な場所に住んでいる人たちはとても良い霊性修行の機会が与えられているとも言えますね。

 また多くの人たちが霊性修行に抱いている過ちの一つは、既にあるにもかかわらず、厳しい修行によって獲得しなくてはならないと思っていることです。マハルシは「自分の努力をあざ笑うときがやってくるだろう」と言っています。私の師も「この世界に努力は要らないよ」と言っていました。勿論自我を静めるため、意識を変化させる為、肉体を浄化する為にはある程度の努力は必要ですが、愛・至福を獲得する為の努力は必要ありません。何故なら我々は既にそれだからです。

 また悟りの教えは、単純すぎてかえって難しいということ、シンプルすぎて信じられないと言うことです。ですので、信頼する人や本を見つけて、この人の言葉なら信じられると思って謙虚に学ぶことが一番良いと思います。


 まずはできるだけリラックスすることを覚えてください。



「真我は近くにあり、それへの道は易しいものだ。あなたがすべきことは、ただ何もしないということだけだ。」
「解決法を探すのをやめるという唯一の解決法を除いて、解決法はないのだ。」
(ニサルガダッタ・マハラジ)